公式HP:https://www.rakuten-movie.co.jp/brightburn/
上映日:2019年11月15日
製作国:アメリカ
上映時間:91分
視聴:2019/11/17
あらすじ
不妊に悩む夫婦の元に、宇宙から赤子がやってきた。これ幸いと喜ぶ夫妻は養子として育てたが、十年の後、少年ブランドンは生まれ持った力に気づく。折しも思春期を迎え、反抗的になり、女に興味を持ち、いじめられる、など様々な環境が変化。ちょっとしたわがままでも他者を従えることができてしまうことに気が付いたブランドンは、狂暴化、邪魔なものを殺害していった末、遂には自身の両親までも手にかける。世界の敵となったブランドンは世界中に恐怖を振りまく都市伝説の一つとなる。
個人的な感想
己の力に目覚めた少年が、悪意を持って行動する。予告を見た瞬間から九分九厘、想像できる内容である。しかし、例えば、ゾンビと化したビーバーに襲われるホラー映画『ゾンビーバー』などもあらすじだけで物語を九分九厘、把握できる。ホラー映画とはおおよそ想像の上にも下にもいかないものである。そういう意味では、実にホラー映画らしい作品であるとも言える。
俺には物語のテーマといった難しいことは分からない。ジャンプマンガから努力、友情、勝利を読み取るくらいはできるが、夏目漱石から教訓めいた内容を読み取ることは俺にはできない。だからか知らないが、本作からテーマらしいテーマを読み取ることはできなかった。「思春期を迎えた少年に誤った接し方をすれば取返しのつかない行いをしてしまうこともありうる」といった教訓も取り出せないことはないと思うが。本作は十二分によくやっていたと思うし、両親の植え付けた善良な精神であっても、生まれ持った性質を打ち消すことは難しいというようにも見える。となれば、犯罪気質を持った人間はどうあがいても犯罪を犯してしまう、というような決定論的な結論になってしまうが。おそらく、製作者が語りたかった部分はそこではないだろうとも思う。ハリウッドで差別主義者的な内容がテーマとして決定されることはないと思われるからだ。
もっと言えば、本作にはストーリーといったストーリーもなかったように思う。いじめられていた鬱屈からか、思春期を迎えた少年の偽悪的行動故か、生まれ持った性質からか。これは分からないが、残酷な行動を繰り返す少年が周囲の人間に破滅をもたらす。言ってしまえばこれだけで、ホラー的な盛り上がりこそあるものの、内容は全く一本調子である。個人的には、これはストーリーではなくシチュエーションであるというように感じた。思考実験といっていっていい。「もし宝くじで一億円を手に入れたらどうしよう」と考えた時、貯金をするだとか、投資に回すだとか、あるいは犯罪に巻き込まれるかもしれない。その一番安直な願望、想像だけを取り出したように思える。
あるいは、こうとも言える。いつかスーパーヒーローとブランドンの戦うストーリーが展開される。これは山も谷もある、純粋なエンターテインメント作品であった。いくつも続編が制作され、ヒーローだけでなくヒールであるブランドンの人気も高まっていく。そうした際にできたスピンオフの前撮りという体だ。
こういった見方をすると、よくできた映画であるとは思う。少年の表情も作り込まれているように思えるし、片目の傷ついた女性の一人称カメラなど面白い効果の映像もある。きちんと作ったんだなということは分かるし、この先に見える大きなサーガの前段を見ていると思えば。なるほど、「ファンには嬉しい映画」であるように見えてくる。
いかんせん、一本目、これ単体で見ると、いささか物足りなさがある。なんというか、百物語で語られるような、安直な怪談を一時間半の尺で見せられたような感覚である。
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