例に漏れず、『スプラトゥーン3』を楽しんでおる。何が面白いのか。スプラトゥーンは俺に視認能力を求めない。そこがいい。
上に対する移動が緩やか
俺はFPSもTPSもやらない。3Dのアクションゲーム自体に苦手意識がある。何故かと言うと、すぐ道に迷うし、自分がどこで何をやっているのかわからんくなるからである。感性がおじいちゃんなのだ。
特にきついのが画面の縦揺れである。上下に移動すると、途端に見当識を失ってしまう。『マリオオデッセイ』をやっていた時に思い知ったが、マリオはジャンプ力が高すぎる。真っ直ぐ走って、跳んでいるだけなのに、不意に場所がわからなくなる。
『スプラトゥーン』はジャンプ力が低い。頭身が低いからというのもあるが、ヒト型でもイカ型でも大したジャンプにならない。これがありがたい。そのちょっとしたジャンプで飛距離が変わるからゲーム的には意味があるのだけど、操作する俺の脳に負荷をかけない。その程度のジャンプ力が大変嬉しい。
アクションゲームの爽快感は移動量と速度にあるとは言える気がする。ジャンプ力の高いゲームは爽快感も強いと言えるのじゃないか。その流れで言えば、『スプラトゥーン』の爽快感は低いのだろうか。そんなこともない。
イカ型の横移動もさることながら、『スプラトゥーン』は飛び降りるアクションが頻繁に発生する。高いところまでえっちらおっちら登って、飛び降りることもあれば。リスポーン地点や大砲状のものから飛ばされることもある。上方への移動は弱くても、下方への移動はあるんである。
不思議なもので、俺は上方の画面遷移は厳しいのだけど、下方に対する画面遷移には強い。おそらく、人類は下に降りる経験をよくする一方で、上に飛び上がる経験というのをほとんどしないからだろう。身体が慣れた行為は脳が補正してくれるため、下方への移動には認知できるんである。
画面が明るい
画面全体が明るいというのも良い。見やすいんである。おじさんは暗がりのものを見るのが苦手である。薄ぼんやりとしたフィールドだとどこに何があるのかよくわからず、ストレスがたまる。『スプラトゥーン』の画面は配色が明るい上に、天気もいい。
他のTPSゲームに暗がりが多いのは、射線の遮蔽物を必要とするからだと思うんである。互いに撃ち合う関係上、撃たれないようにするために道の角、置物の裏に隠れる必要がある。より効果的に隠すためにゲームは暗がりを意識的に作るし、物理演算は光の加減をリアルに再現する。結果、おじさんには見づらい画面になる。
『スプラトゥーン』の場合も遮蔽物はあるし、隠れることもある。あるが、基本的にはイカの姿になって、壁や地面に潜むのが「隠れる」である。暗がりを作る必要がないから、天気をよくして、明るくできる。
〆
つまり、『スプラトゥーン』は人体の視認能力をよくわかっていて、そんなに負荷のかからない画面を提供してくれる。「自分がどこにいるのかわからなくなる」とか「画面が暗くて敵がよく見えない」という状態を排除してくれるため、「ゲームができる」のである。
「ゲームができる」というのがすごいことで、これを満たしていないと「面白いんだけど、自分にはできないゲーム」になってしまう。『スプラトゥーン』には様々な良い点、面白いシステムがあると思うが。個人的には、「ゲーム基礎体力が低い人でもできる」という土台を整えてくれたことが嬉しい。
思えば、最近の『ゼルダ』や『カービィ』も上方への移動は遅く、その分の爽快感を横移動や下移動で補うような作りになっていた。最近の任天堂のポリシーなのかもしれん。
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