『コワい話はキくだけで。』というマンガを読んだ。これが怖い。めちゃくちゃ怖い。
このマンガ、いわゆるホラーマンガなのだが、いくつか特徴がある。いかにも現代ホラーというガジェットが登場する。例えば、スマホの位置情報アプリだとか、片耳ワイヤレスイヤホンが出てくる。これが絶妙に怖い。
現実感があって、身近な怖さを感じる。怖い話というのはどこか古くさい部分もあって、怖いけれど救われる部分もある。デジタルな感性とは少しずれていて、その非現実的な部分が不気味でもあるが、ちょっと他人事のようでもある。
このマンガのデジタルな今時のガジェットというのは、そこが違う。デジタルならではの胡散臭さ、そんなことないだろう、という不信感を抱かせつつも。同じくらい、今手に持っているスマホやカメラアプリなんかが得体の知れない何かにつながっているように思えてもくる。
考えてみれば、プログラマの俺であってもスマホなりアプリの全容を理解しているわけではない。デジタル機器の思わぬ挙動、よくわかっていない仕組みがあり、そんな怪談のような不気味なことが起きない、と言い切れない。そこにこのマンガの怖さがある。
もう一つ、特徴的な部分があって、このマンガは作者が編集部から紹介された人員とお話をしたりだとか、チャットでやりとりし、それをマンガとして構成している、という体を取っている。怖い話が趣味でも、マンガ家として掲げるネタというわけでもなく、あくまで職業人として引き映している。いわばイタコ的な仕事をしているという設定である。
そのためか、主人公である作者の自画像の解像度がコロコロと変わるのである。現実を舞台にしている部分ではエッセイ風のコミカルな三等身くらいのイラストである。話を聞いている場面ではリアルな顔になっており、等身も高い。
「ということを聞いたんですよ」という体なのはわかるのだが、ここにも奇妙な怖さがある。全部が解消されて、他者化された世界になるのだが。そこに足下の不確かさというか、漠然と突き放した感覚が出てきて、今自分がいる場所がどこなのか、背筋にぞわっとしたものが漂うのである。
とまれ、ホラーマンガとして出色の出来だと思うので、怖いものが大丈夫な人はぜひ読んでみて欲しい。
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